妊娠前から知っておきたい「マタニティー・ブルーズ」と「産後うつ」
公開日:2023年3月23日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
妊娠中から産後にかけては、女性ホルモンの急激な変化などにより、体だけでなく心も不安定になりがちです。産後は特にちょっとしたことでも落ち込んだり、不安な気持ちになりやすいと言われています。誰でもなる可能性のある「マタニティー・ブルーズ」や「産後うつ」を、妊娠前から知っておきましょう。今回は産後に落ち込みやすい原因と、おすすめの食事をご紹介します。
マタニティー・ブルーズ、産後うつとは?症状と原因
「マタニティー・ブルーズ」という言葉を聞いたことがありますか?産後女性の25~50%が経験すると言われています。産後3~5日にピークがあり、涙もろさ、抑うつ気分、不安、緊張、集中力の低下、焦燥感などの精神症状と、頭痛、疲労感、食欲不振などの症状がみられます。女性ホルモンの急激な減少と出産のストレス、生活の変化などが原因と言われていますが、だいたい1~2週間程度で自然と症状がなくなってきますので、特に治療は必要ないとされています。
一方「産後うつ」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、こちらは産後3ヵ月以内に発症することが多い「うつ病」のことで、産後女性の10%がかかると言われています。産後うつの場合は気分の落ち込みや不安など、マタニティー・ブルーズの症状が2週間以上続くのが特徴です。女性ホルモンの急激な変化はもちろんのこと、もともとうつ病を抱えていたり、妊娠中から精神的に不安定だったり、育児の環境であったり、様々な原因によって発症すると言われています。悲しい話ですが、産後に自殺で亡くなった方の数は、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍で、妊娠・出産期の死因として最も多いこともわかっています。
妊娠前から、マタニティー・ブルーズや産後うつは誰でもなる可能性があると知識として知っておくこと、そしてパートナーや家族とも共有しておくことが大切です。自分や周りが知っておくだけでも、自分を必要以上に追い込まずに済み、外部からのサポートも受け入れやすくなります。
マタニティー・ブルーズ、産後うつを予防する食事の摂り方
産後は赤ちゃんのお世話が中心の生活となります。産後数ヵ月は夜間にもおむつ替えや授乳などの必要があるため、まとまった睡眠時間や、食事もしっかり取れていないというママもいます。睡眠や食事がきちんと取れていないと、体だけでなく、心にも支障をきたしてしまいます。ただそうはわかっていても、料理をしたいのにしんどくてできないというジレンマを抱えている方も少なくないはずです。凝った料理をしなくても大丈夫です。産後の食事のポイントを知っておきましょう。
和食を選ぶくせをつけましょう
産後約2ヵ月間は産褥期と言い、体力を回復させる期間でもあります。この間は、十分な休養と栄養が必要です。母乳育児の方は赤ちゃんに栄養を与えるために、妊娠前よりも栄養素を多めに、バランス良く摂りましょう。とは言っても、産後は体も心も疲れきっていて、いちいちカロリーを計算したり、バランスを考えるのは現実的に難しいです。実践しやすい方法として「日本の伝統的な和食を摂る」ことをおすすめします。
ある調査で西洋式食事に比べて、和食はうつ病のリスクを低下させることがわかっています。和食は日本人にとって健康的な食事であると言えますし、食べ慣れた味でもあります。具体的には、ご飯は食物繊維や水分も摂れるため産後の便秘におすすめですし、主菜は肉や魚・大豆製品など、筋肉や血液の材料となるたんぱく質をしっかり摂ることで、うつ病予防になります。また、副菜にお浸し、煮物、和え物などを食べることで、体の調子を整えるビタミン・ミネラル、味噌汁からも野菜か海藻類が摂れるため、食物繊維も補えます。ただ、和食にも欠点が2つあり、しょうゆやみそなどを使うので塩分量が多くなりがち、またカルシウムが豊富な乳製品が摂りにくいという点があります。汁物は全て飲み干さない、味つけを薄くするなどして調整しましょう。また、牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品をおやつに摂ることを心がけることで、よりバランスが良くなるでしょう。
無理をせず宅配やサプリメントも利用しましょう
産褥期と上手につき合い、回復のスピードを早めるためには、安静に過ごして体をゆっくり休ませることがとても重要です。この時期に家事や育児を完璧にこなそうとして無理をしてしまうと、回復の進み方が遅くなるだけでなくさらなる不調を招き、赤ちゃんのお世話もままならなくなるほど体や心に影響を及ぼすことがあります。そのため、家族やパートナーに頼ったり、家事代行や食事の宅配などの支援サービスの利用、またサプリメントや市販のプロテインなどの使用を併せて検討してみるのも得策です。出産後できる限りゆっくり休めるように、出産前に環境を整えておきましょう。
産後はなかなかしっかり調べ物をする時間もないため、妊娠前から「マタニティー・ブルーズ」や「産後うつ」について知り、パートナーや家族とも話しておくことで、もし産後に症状が出てしまった時も慌てず過ごすことができます。産後ケア施設や相談センター、宅配サービスなども事前に調べておくのも良いでしょう。産後は無理をせず、周りに頼りながら赤ちゃんとの時間をゆっくり楽しめると良いですね。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者