早産のリスクも!?細心の注意を払いたい妊娠中の食中毒対策
公開日:2023年4月6日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
妊娠すると免疫が下がり、食中毒になりやすいと聞いたことがある方もいるかもしれませんが、特に気をつけないとならない食中毒や食べ物に、どんなものかあるかをご存知ですか?妊娠中の食中毒は、早産のリスクがあるとても怖いものなのです。今回は妊娠した場合の免疫機能と食中毒の関係、食中毒にならないようにするための食べ物の扱い方についてのお話です。
妊娠中に食中毒になりやすい理由
妊娠というのは女性の体の中で、自分の卵子と自分の一部ではない精子とが受精した、いわゆる胎児を育てることを言います。通常の免疫機能では自分の体ではないものは異物とみなし、攻撃して体外へ出そうとする働きがあります。しかし妊娠中は、赤ちゃんを異物として攻撃してしまうと大変です。そこで、女性の体は自分の免疫力を下げて赤ちゃんを異物としてみなさず、妊娠が継続できるように調整します。このような一連の仕組みにより、妊娠すると女性の体は免疫力が下がり、必然的に食中毒に当たりやすくなってしまうのです。
妊娠中に気をつけたい食中毒と対策
食中毒は細菌やウイルスが関係するものが多く、他に毒キノコやふぐ毒など、自然毒によるものなどがあります。原因によって様々な症状がありますが、下痢・腹痛・嘔吐・発熱・めまい・悪寒など、重症化すると最悪の場合死に至ることもあります。そのため、妊娠中でなくても気をつけないとならないですが、妊娠中特に気をつけたい食中毒をご紹介します。
リステリア菌
リステリア菌は、生ハム・刺身・スモークサーモン・ナチュラルチーズ・肉のパテなど、加熱していないたんぱく質性の食品や、加熱不要な調理済み食品によって食中毒を引き起こす細菌です。妊娠中にリステリア菌に感染すると、早産や流産のリスクが上がり、赤ちゃんに影響が出ることがあります。リステリア菌は4℃以下の低温環境や、塩分濃度10%でも増殖可能です。すなわち冷蔵庫で保管しても、塩分濃度が高いものでも、リステリア菌は増殖するということです。妊娠中は、上記の加熱していないたんぱく質性の食品を避けるようにしてください。もし食べる場合は、中までしっかりと火を通してから食べましょう。
トキソプラズマ
トキソプラズマは寄生虫の1種です。加熱不十分な豚肉、生野菜やネコの糞に含まれていることがあり、これらが口に入ることによって感染します。妊娠中にトキソプラズマに感染すると、流産や死産のリスクが上がります。また赤ちゃんが水頭症などを起こす、先天性のトキソプラズマ症になることがあるとも言われています。肉を中心部までしっかり加熱すること、生野菜はしっかり洗って食べる、または極力避けること、ネコをおうちで飼っている場合はきちんと生活の場を分けて、便に触れた後はしっかりと石鹸で手を洗うことなどで防ぐことができます。
黄色ブドウ球菌
妊娠中に特に気をつける必要がある上記のリステリア菌とトキソプラズマ以外に、いわゆる一般的な食中毒と言われる黄色ブドウ球菌にも注意が必要です。黄色ブドウ球菌は健康な人の手や鼻、喉などに存在しますが、特に手の傷や手荒れの部分には通常よりも多く存在します。ですから手に傷があるときは手袋をして、食品や調理器具に触れるなどしましょう。黄色ブドウ球菌に感染すると、吐気・嘔吐・下痢などの症状が出ます。妊娠中は赤ちゃんのためにしっかりと栄養を摂りたい時期ですが、吐気や嘔吐により難しくなってしまったり、下痢で多くの水分が出て脱水になったり、早産のリスクも上がる場合もあるため、黄色ブドウ球菌にも十分気をつけてください。
非妊娠中の食中毒では主に嘔吐や下痢といった症状が出て、食中毒の原因物質が体外へ排出されたら治まります。しかし妊娠中に食中毒にかかると、早産、流産などのリスクが高まりますし、自身も免疫力が落ちているため、食中毒症状が重症化しやすくとても危険です。今回ご紹介したように非加熱の食材を避ける、生野菜はしっかり洗う、手をしっかり洗うなど、できる対策をしっかり取るようにしましょう。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者