離乳食で大切な「鉄」補給のポイントは?豊富な食べ物や増やすコツ
公開日:2024年9月25日
記事監修:管理栄養士 広田千尋
離乳食は食べる練習以外にも、母乳や育児用ミルクで不足する栄養素を補給する役割があります。中でも赤ちゃんに大切な「鉄」は、意識して取り入れたい栄養素です。今回は、離乳食に鉄が大切な理由をはじめ、鉄が豊富な食材や、鉄を増やすポイントについて解説します。
離乳食で鉄が大切な理由
まずは離乳食で鉄の補給が大切な理由について、確認してみましょう。
生後6カ月で貯蔵鉄がなくなるため
赤ちゃんはお腹の中で母体から鉄をもらって、体に蓄えた状態で生まれてきます。しかし、生後6カ月ごろには蓄えていた鉄が減ってしまい、鉄が不足した状態になる恐れがあります。育児用ミルクには鉄が含まれているものの、母乳にはほとんど鉄が含まれません。そのため、母乳育児が中心の場合は、赤ちゃんが鉄欠乏の状態になりやすいことが知られています。また育児用ミルクが中心の場合も、食べる量が増えてミルクの量が減ると、鉄の摂取量が減る恐れがあります。離乳食からしっかり鉄を補給して、赤ちゃんの鉄不足を防ぐことが大切です。
鉄が赤ちゃんの成長に大切なため
鉄は全身に酸素や栄養を届けたり、脳の発達に関わったりする役割がある栄養素です。鉄が不足して欠乏の状態が続くと、赤ちゃんの成長に影響する可能性が知られています。体がグングン大きくなる時期なので、離乳食からしっかり取り入れましょう。
赤ちゃんの1日に必要な鉄の量
赤ちゃんは1日にどのくらい鉄が必要なのでしょうか。1日の推奨量は下記の通りです。
【赤ちゃんの1日に必要な鉄の量】
・6~11カ月 男児5.0mg、女児4.5mg
・1~2歳 男児、女児4.5mg
この量を目標に摂取できるよう、次に紹介するポイントを実践してみましょう。
離乳食の鉄補給のポイント
離乳食で鉄をしっかり補給するには、どのようにするとよいのでしょうか。ポイントを4つ紹介します。
鉄を含む食材を取り入れる
まずは離乳食に、鉄を含む食材を積極的に取り入れてみましょう。鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、それぞれ下記の特徴があります。
・ヘム鉄 動物性食品に多く含まれ、吸収率が高め
・非ヘム鉄 植物性食品に多く含まれ、吸収率が低め
より効率的に鉄を摂るなら、ヘム鉄を意識的に取り入れてみましょう。
【ヘム鉄が豊富な食材の鉄含有量(1食あたり)】
・鶏レバー(15g) 1.35mg
・カツオ(15g) 0.29mg
・牛もも肉(15g) 0.20mg
・豚ひれ肉(15g) 0.14mg
・マグロ(15g) 0.14mg
・ツナ缶(15g) 0.09mg
※1食あたりの量は時期や食べられる量によって異なります。
ヘム鉄は赤身の肉や魚に多く含まれています。レバーは調理が大変な場合には、ベビーフードなどを活用してもよいでしょう。ただし、ヘム鉄を含む動物性食品は、1日に食べられる量はそこまで多くないため、合わせて非ヘム鉄の摂取も大切です。下記を参考に取り入れてみましょう。
【非ヘム鉄が豊富な食材の鉄含有量(1食あたり)】
・納豆(15g)0.50mg
・木綿豆腐(30g)0.45mg
・小松菜(10g) 0.28mg
・卵(1/3個) 0.27mg
・オートミール(大さじ1)0.23mg
・ほうれん草(10g) 0.20mg
・グリンピース(10g) 0.16mg
・ブロッコリー(10g) 0.13mg
※1食あたりの量は時期や食べられる量によって異なります。
非ヘム鉄を取り入れる際は、ビタミンCや動物性タンパク質と合わせて摂るようにすると、吸収がよくなります。離乳食のメニューを考えるときに、おかず(肉・魚・卵・大豆)と、野菜がそろうようにすると、鉄を効率よく摂取できるでしょう。
育児用ミルクを活用する
離乳食に育児用ミルクを活用することで、離乳食の鉄を強化できます。育児用ミルクには、溶かしたミルク100mlあたり0.8mgの鉄が含まれています。例えば、野菜のミルク煮やミルク粥などに使うと、手軽に鉄をプラスできるでしょう。
鉄強化食品を活用する
赤ちゃん用の鉄強化食品を上手に活用してみましょう。例えば、鉄入りのシリアル、ビスケット、ふりかけなど、さまざまな食品があります。離乳食やおやつに手軽に取り入れやすく、不足しがちな鉄をプラスできます。
1歳までは牛乳の与えすぎに注意する
1歳までは、ミルクの代わりに牛乳をたくさん飲ませるのは控えるようにしましょう。牛乳にはほとんど鉄が含まれておらず、牛乳ばかり飲んでいると、鉄が不足する恐れがあります。牛乳は少量を離乳食に使う程度にしましょう。
離乳食で鉄をしっかり摂るには、ひとつの食材に偏りすぎずに、鉄の豊富な食材、育児用ミルク、鉄強化食品などを上手に活用するようにしましょう。また離乳食は赤ちゃんのペースで無理なく、楽しく進めていってくださいね。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
この記事の監修者:管理栄養士 広田千尋