産後の睡眠不足〜質の良い睡眠のとり方や食事のポイント〜
公開日:2022年2月12日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
妊娠中、お腹が大きくいろいろなマイナートラブルに悩まされているときは、「産んだら身体は楽になるもの」そう思っているママも多いのではないでしょうか。しかし子育ては想像以上にハードなもの。なかでも産後すぐのママを悩ませるもののひとつに、夜間まとまった睡眠をとることができず、寝不足に陥りやすいということがあげられます。
今回は悩めるママの質の良い睡眠のとり方と、質を高めるための食事のポイントをお伝えします。
<目次>
1. 赤ちゃんの睡眠の特徴
2. ママの睡眠不足は産後うつの原因にも・・・
3. 上手に睡眠を取り入れる
4. 入浴を味方につける
5. 質の良い睡眠のカギとなる成分を取り入れる
6. 産後ママの不眠対策に!快眠成分を含む食材を使ったレシピをご紹介
赤ちゃんの睡眠の特徴
新生児期の赤ちゃんの睡眠は浅く、1~3時間ごとに目を覚まし、お腹がすいたり、ちょっとした物音や不快感で目を覚ましやすく、細切れの睡眠です。これは赤ちゃんの睡眠リズムが原因で当たり前のことです。
ヒトの睡眠には、脳も身体もしっかりと休んでいる「ノンレム睡眠」と、身体のみが休んで脳は働いている状態の「レム睡眠」の2種類があります。大人の睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠が交互に繰り返され、深い眠りであるノンレム睡眠が全体の8割を占めています。しかし、赤ちゃんはこの睡眠リズムが整っておらず、睡眠全体の50%以上がレム睡眠であることがわかっています。
この時期はママも赤ちゃんのリズムに合わせる必要があり、お世話が大変な時期です。新生児期を過ぎるとだんだんと日中起きている時間が増えて、夜に寝る時間がまとまってくるようになります。
ママの睡眠不足は産後うつの原因にも・・・
女性は睡眠不足になると男性よりうつになる確率が高くなると言われています。寝不足状態が続くと思考や判断力が鈍り、日常的にイライラしやすくなります。成人に必要な睡眠時間は7~9時間と言われていますが、産後間もないママの場合、昼夜を問わない授乳やおむつ替えで、7〜9時間の睡眠を毎日とることは難しいと言えるでしょう。産後は特に交感神経が優位に立ち、身体が興奮状態に陥りがちです。少しでも眠らないと、と解っていても、目が冴えてしまい眠れないこともあるかもしれません。
赤ちゃんのお世話による睡眠不足を少しでも改善するために、どのようなことに気をつけていけば良いでしょうか。産後のママにおすすめの睡眠不足への対処法や、安眠効果が期待できる成分を含む食事についてご紹介していきます。
上手に睡眠を取り入れる
前述した通り産後すぐは夜間にまとまった睡眠時間を確保することが難しいため、日中でも休めるときに仮眠することが一番の対処法です。10分、15分でも睡眠時間が取れると、睡眠不足による疲れや不快症状はいくらか軽減されます。また目が冴えてしまい眠れない時も、身体を横にして目をつむって休むだけでも睡眠に近い効果が得られます。
入浴を味方につける
睡眠の質を上げるためには寝ついてから最初の90分間で深い睡眠をとることが大切です。大人の睡眠サイクルは90~120分と言われ、最初の90分間が一番深い睡眠サイクルです。この深い睡眠の時間に、疲労回復や代謝を促すなどの、身体の機能をコントロールする働きをもつホルモンが分泌されます。そのため、この時間はできる限りしっかりと眠れる環境づくりが大切です。
効果的なのは、寝る前の90分前に体温を上げることです。お風呂に入って身体を温めると、90分後には温まった体温が下がります。体温が下がるときに眠気を誘発するため、自然に眠りにつきやすくなります。赤ちゃんのお世話で忙しく、ゆっくりとお風呂に入る時間も取れないかもしれませんが、なるべく家族に協力してもらいながらお風呂でリラックスして身体を温めると質の良い睡眠がとれるでしょう。
質の良い睡眠のカギとなる成分を取り入れる
緑茶に含まれるテアニン
近年の研究で、緑茶に含まれるテアニンは睡眠の質を改善する効果があることがわかり、話題を呼んでいます。テアニンの働きはカフェインが混在すると弱められてしまうため、茶葉から溶けだすカフェインをいかに抑えるかがポイントです。おすすめは水出し緑茶。テアニンは冷水にも簡単に溶けだしますが、カフェインは水温が低くなるほど溶けだしにくくなるからです。
睡眠の質をつかさどる成分メラトニン
メラトニンは睡眠ホルモンと呼ばれ、眠りに深くかかわる成分です。人の身体には、体内時計という仕組みが備わっており、1日のリズムを無意識に調整しています。しかし、体内時計は毎日少しずつずれていきます。このずれを調整する役割をもつのがメラトニンなのです。食べ物から摂取したトリプトファンは体内でセロトニンへ合成され、セロトニンの一部がメラトニンへ変わります。トリプトファンがセロトニンになり、メラトニンになるまでには時間がかかるため、朝食にトリプトファンを摂取することがおすすめです。
また、意外に思われるかもしれませんが、毎朝起きる時間を一定にすることも快眠につながるポイントです。人の体内時計は朝太陽の光を浴びるとリセットされ、活動的になります。脳は光が届いてから14~16時間後に眠気がくるようにコントロールされているので、毎朝起きる時間を一定にすると、夜は自然と眠くなり、眠れるようになります。
(トリプトファンが多く含まれる食品):牛乳・バナナ・鶏むね肉・チーズ・大豆製品・牛肉・ナッツ類・卵・アボカドなど
リラックス効果のあるGABA
GABAは脳や脊髄で働く神経伝達物質です。脳内の血流を活発にしたり、酸素の供給量を増やし、興奮を抑え、心身をリラックスさせる働きがあり、不眠に効果が期待できる物質です。
(GABAが多く含まれる食品):カカオ・玄米・トマト・雑穀など
体温を下げて入眠を促すグリシン
グリシンには体温を下げる働きがあり、さらに体温時計に作用して生体リズムを整える働きをします。体温が下がることで眠気を誘発するため、不眠の解消に効果の期待できる成分です。
(グリシンが多く含まれる食品):エビ・ホタテ・イカ・カニなどの魚介類
産後ママの不眠対策に!快眠成分を含む食材を使ったレシピをご紹介
簡単おいしい快眠レシピをご紹介します。
玄米のタコライス
~安眠効果が期待できる食品~
トリプトファンを含む食品:アボカド・鶏むねひき肉・ピザ用チーズ
GABAを含む食品 :トマト・玄米
(材料)2人分
玄米:1合(浸水時間が少ない加工玄米がおすすめ)
鶏むねひき肉:160g
トマト水煮缶(カットタイプ):1/2缶
玉ねぎ:1/2玉
にんにく:1かけ
チリパウダー:小さじ1/2
塩:小さじ1/3
オリーブオイル:小さじ2
(トッピング)
アボカド:1/2個
ミニトマト:4個
ピザ用チーズ:適量
アーモンドスライス:適量
(作り方)
① 玄米は浸水し、炊飯する。
② にんにく・玉ねぎはみじん切りに、ミニトマトは1/4サイズに切る。
アボカドは皮をむき、種をとり、1.5cm角に切る。
③ フライパンにオリーブオイルをしいてにんにくを加え、弱火でじっくりと炒め香りを出す。
④ 玉ねぎを加えてしんなりするまで炒める。
鶏ひき肉を加えてそぼろ状態になるまでほぐしながら炒め、トマト水煮缶・塩を加える。
中火で水分を飛ばしながら20分ほど煮込む。
⑤ 水分が飛んだらチリパウダーを加え、味を見て足りないようなら塩で味を整える。
⑥ 器に玄米を盛りつけ、タコスミートを盛りつける。
上にアボカド・ミニトマト・ピザ用チーズをトッピングし、アーモンドスライスを散りばめたら完成。
【ポイント】
チリパウダーがアクセントのタコスミートはたくさん作って冷凍保存も可能なので、産後の忙しいママにもおすすめの一品です。通常は豚ひき肉や合いびき肉で作ることが多いですが、トリプトファンを多く含む鶏むね肉を使用し、さっぱりと食べることができます。
ホタテの地中海焼き
~安眠効果が期待できる食品~
GABAを含む食品:トマト
グリシンを含む食品:ホタテ貝柱
(材料)2人分ベーコンハーフ:1パック(6枚程度)
ホタテ貝柱(生食用刺身):6個
トマト:1個
にんにく:1かけ
オリーブオイル:小さじ1
バルサミコ酢:大さじ1
塩:少々
あらびき黒こしょう:少々
ローズマリー:適量
イタリアンパセリ:適量
(作り方)
① トマトはトースターまたはオーブンでグリルする。(200度で10分程度)
② ベーコンは1.5cm幅に切る。にんにくは粗みじんにする。
③ フライパンにオリーブオイルをしき、ベーコンを炒める。
こんがりと焼き色がついたらにんにくを弱火で熱し、香りをだす。
④ ホタテを加えさっとソテーし、ローズマリー・イタリアンパセリを加え、塩・あらびき黒こしょうをふる。
⑤ ①のトマトを器に盛りつけ、その上にホタテを並べる。
⑥ フライパンにバルサミコ酢を加えて軽く温め、ソースとしてかける。
【ポイント】
身体を冷やす効果のあるグリシンを含む、ホタテを使ったシンプルな一皿です。バルサミコ酢を使いイタリア風に仕上げましたが、ない場合はウスターソースに少量の酢で代用も可能です。
今回は産後の寝不足の対策やおすすめの食事についてのお話でした。子育てに寝不足はつきものですが、睡眠不足が続くとさまざまな不調をきたします。放置せずに早めに対策を取り心身ともに健康を保ち、子育てを楽しみましょう。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者