油の種類を知っていますか?妊娠中意識したい質の良い油の選び方
公開日:2022年6月17日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
妊娠中は体重の増加が気になり、油は太る、体に良くない、と思ってあまり摂らないようにしている方もいるかもしれませんが、実際のところ妊娠中の油はどうなのでしょうか。今回は妊娠中に摂りたい栄養素の中でも、実は大事な油の摂り方、選び方についてお話していきます。
脂質は最も効率の良いエネルギー源
私たちが生きていくために必要な三大栄養素は「たんぱく質」「糖質」「脂質」で、油は「脂質」に分類されます。たんぱく質・糖質は1gあたり4kcalのエネルギーがあるのに対し、脂質は1gあたり9kcalと、最も高いエネルギーを生み出す効率の良い栄養素になります。そのため、揚げ物や肉の脂身など、脂質の多い食品を多く食べているとエネルギーの過剰摂取となり、肥満につながるのです。
油はエネルギーが高く肥満の原因となるので私たちの「敵」なのでしょうか?実はそんなことはありません。油は私たちが活動するためのエネルギー源であり、ホルモンや細胞膜、核膜などの材料にもなっています。不足すると発育不全や皮膚の炎症を引き起こすことがあります。さらに皮下脂肪として体を寒さから守ったり、臓器を保護したりする働きがあるほか、ビタミンA・D・E・Kといった油脂に溶ける性質があるビタミン(脂溶性ビタミン)の吸収にも役立っている、とても大事な栄養素です。
体に良い油を選びましょう。油の種類
油には様々な種類があり、この種類によってメリット・デメリットが大きく異なります。詳しく見ていきましょう。油の主成分は脂肪酸です。油には、バター・ごま油・牛脂などいろいろな種類がありますが、それらはすべて炭素・水素・酸素の3つの原子で構成され、その構造によって分類されます。油の分類の仕方にはいくつかの種類があります。
「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」
■飽和脂肪酸とは
多く含まれる食品:肉やバター・ラードなど
一般に常温で固形なものが多いので、バターや肉の脂身に含まれると覚えましょう。現代の日本人の食生活では過剰摂取になりやすいと言われています。体の重要なエネルギー源となりますが、摂りすぎるとLDLコレステロールが増加してしまい、動脈硬化・心疾患・糖尿病・肥満などのリスクが高まります。
■不飽和脂肪酸とは
常温で液体の油です。不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)と多価不飽和脂肪酸(オメガ6系・オメガ3系)に分類されます。一般的に飽和脂肪酸に比べて酸化されやすいという特徴があり、特にオメガ3系の脂肪酸は加熱調理には向いていません。一般的に不飽和脂肪酸は以下のように分類されます。
◎オメガ9系:オリーブオイルなど(オレイン酸)
◎オメガ6系:紅花油・ごま油・菜種油・サラダ油など(リノール酸)
◎オメガ3系:エゴマ油・アマニ油(αリノレン酸・EPA・DHA)
不飽和脂肪酸の脂肪酸はそれぞれ特徴があり、種類によって体に働きかける作用が異なります。
◎オレイン酸:コレステロールを下げる働きがあります。
◎リノール酸: オレイン酸同様にコレステロールを下げる働きがあります。
◎αリノレン酸: エネルギーになりやすく、必要に応じて体内でDHAやEPAに作り替えられます。
◎EPA(エイコサペンタエン酸):青魚に多く含まれます。血栓をつくらないようにする働きや血液中の中性脂肪を下げる働きがあります。また、非常に酸化されやすいという特徴があります。
◎DHA(ドコサヘキサエン酸) :EPAと同様に血栓をつくらないようにする働きや脳の記憶を高める働きがあります。非常に酸化されやすいという特徴があります。
「サラダ油」と「キャノーラ油」
スーパーで安く手に入るので、家にあるという方も多いのではないでしょうか?サラダ油やキャノーラ油はどんな油なのかみていきましょう。
◎サラダ油とは
サラダ油とは、もともとドレッシングやマヨネーズとして、生野菜にかけて使う目的としてつくられた油です。和食文化が盛んだった日本では天ぷらや炒め物などの加熱に油を使っていましたが、生野菜に油をかけて食べるという文化がありませんでした。生野菜に従来の油をかけると固まったり雑味が生じてしまい、おいしく食べられなかったため、おいしく食べられる油として発売されたのがサラダ油なのです。
ごま油やオリーブオイルなどは原料が明らかですが、サラダ油は原料が1つに限らず、決められた基準を満たしている植物油であればサラダ油と名乗って販売することができます。サラダ油の原料は主に、菜種・ごま・大豆・コーン・米などです。また、サラダ油の中には1種類の原料で作った油だけではなく、2種類以上の原料を混ぜて作った油もあります。このように複数の原料で作ったものは「混合サラダ油」と呼ばれています。
◎キャノーラ油とは
キャノーラとは、菜種油に使われるアブラナを改良した品種です。つまり、キャノーラ油は菜種油の一種なのです。一般的な菜種油には過剰な摂取により有害なリスクがあると言われている成分が含まれているのですが、そのリスクを極力減らした品種が開発され、その品種から作られた油をキャノーラ油と呼ぶようになったのです。
キャノーラ油はオメガ6系に分類されますが、オメガ9系の脂肪酸であるオレイン酸も比較的多く含まれます。酸化しづらく血中の悪玉コレステロールを減らすという働きがあります。そのため、「キャノーラ油は健康に良い油」と呼ばれるようになりました。
サラダ油やキャノーラ油はオメガ6系のリノール酸の脂肪酸です。リノール酸は私たちの体内で作ることができない必須脂肪酸ですが、現代人の多くはオメガ6系を過剰に摂取しています。お菓子やパン・マヨネーズ・カップ麺などの「見えない油」にはキャノーラ油やサラダ油のようなオメガ6系の脂肪酸が多く含まれているのです。リノール酸は取り過ぎると免疫細胞が働きにくくなり、その結果アトピー性皮膚炎やアレルギー性の炎症を引き起こす、と研究で明らかになってきています。また、動脈硬化や心臓の病気を引き起こす可能性もあると言います。
現代の食生活ではオメガ6系の油の摂りすぎに注意をし、加熱調理にはオリーブオイルを使うなど、調理に一工夫をすることがおすすめです。
妊娠中の油の選び方
妊娠中だから、と特別摂ってはいけない油などはありません。しかし、日ごろの食生活を振り返って、料理に使う油以外に「見えない油」を摂り過ぎていませんか?特に急な体重の増加に気をつけたい妊娠期、摂っているつもりがなくても知らないうちに脂質を摂り過ぎているかもしれません。
①主食
パンの中でもクロワッサン・クリームパンなどの菓子パンは要注意です。カップラーメン・そうめん・やきそばなどの麺類にも含まれます。
②お菓子
チョコレート・ポテトチップス・揚げせんべい・ドーナッツなど、さまざまな種類の菓子類に脂質は多く含まれます。
③豚肉・牛肉など
お肉の白い部分はすべて脂で、過剰摂取になりやすい飽和脂肪酸です。お肉を買うときは脂身の少ないヒレ肉を選ぶ・しゃぶしゃぶなど油を落とす調理法にするなど工夫しましょう。
油には前述したように様々な種類があり、脂肪酸のバランスが非常に重要となります。現在の食生活はオメガ6系の脂肪酸を多く摂取し、オメガ3系の脂肪酸が不足しているという状態です。ある研究グループの発表によると、妊娠マウスが脂肪酸バランスの悪い餌(オメガ6系に偏った餌)を食べると生まれてくる子が砂糖や油を好んで食べるようになり、結果として体重が増えやすくなったそうです。妊娠中の栄養管理により、子の肥満を予防する可能性があると示されています。
油の分類はいくつもあり、少し難しく感じてしまうかもしれませんが、普段私たちが食べているものに含まれる油や調理で使う油には、それぞれ性質があることが分かったかと思います。近年は健康志向の方が増え、スーパーでもエゴマ油、アマニ油などをよく見かけるようになりました。ぜひ、ご自宅で使う油を一度見直してみてくださいね。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者