コラム

「時間栄養学」を味方に!妊娠中も健やかな生活リズムを送るためのポイント

公開日:2022年3月2日

記事監修:管理栄養士 松尾和美

妊娠中、ママと赤ちゃんが健やかな毎日を送るためには、バランスの良い食事や適度な運動が不可欠です。今までの栄養学では「何を」「どれだけ」食べるか、ということが重視されてきました。しかし研究が進み、近年はそれに加えて「いつ」「どのように」食べるかの視点を加えた「時間栄養学」の考えが注目されています。
既に糖尿病患者の食事療法に取り入れられるなど医療分野でも活用されていますが、この考え方はどんな方を対象にしても日常に取り入れることが可能で、寝不足や、逆に1日中眠たくなってしまうような妊婦さんにも取り入れやすい考え方なので、ぜひ参考にしてみてください。

私たちの中に備わっている体内時計

人間の体内時計とはどこにあるのでしょうか?実は体内時計の中心は脳の「視交叉上核」という部分にあります。ここが言わば主時計となり、ここから身体のすべての臓器へ指令を出します。また、身体のほぼ全ての臓器にも体内時計があり、これは副時計の役割をしています。
私たち人間には、約1日周期でリズムを刻む体内時計が備わっています。特に意識しなくても日中は活動状態に、夜間は休息状態に切り替わります。ですが、主時計の周期は24時間よりも少し長く25時間となっており、そのままでは少しずつずれてしまいます。その少しずつずれた主時計をリセットするために必要なのが、「太陽の光」です。毎朝決まった時間に朝日を浴びることが、体内時計の調節にとても重要な役割を果たすのです。
副時計は主時計と異なり、光に反応して調節されることはありません。その調整に重要となる鍵は、実は「朝食」です。毎朝決まった時間に規則正しく食事を食べることで、食事時間の数時間前から消化液が分泌されるなど、身体が準備をしていることがわかっています。
つまり、朝は起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴び、決まった時間に朝食を食べることが、体内時計のズレをリセットするために有効なのです。

体内時計をリセットするための理想の朝食は?

朝が忙しいとパンやご飯などの炭水化物のみになりがちですが、一緒に卵や豆腐などのたんぱく質食材を摂ることが大切です。また、体内時計をリセットするためには朝起きたらすぐに食べることが重要で、朝食はできれば起床後1時間以内に摂ることが理想です。
栄養素の消化・吸収・代謝は、朝から昼ごろまでが良いとされています。日本人の一般的な食生活は、夕食が一番量や品数が多いケースがほとんどですが、夕食は控えめにし、朝食は主食・たんぱく質をしっかりと摂り、カレーやラーメンなど脂質が多く、エネルギー量が多いものは昼食で食べるのがおすすめです。極端な話ですが、1日の食事量のほとんどを昼食までに摂ってしまうことが良いとされているのです。
とはいえ、妊娠中は身体が疲れやすく、朝決まった時間に起きることが難しい場合や、つわりで食事量や時間を決めることが難しいこともあるでしょう。つわりの場合は、食べられるものを食べられるときに摂ることが最優先なので、あまり気にし過ぎないことが大切です。つわりなどがなく、体調が良い場合は、朝食に空腹になり美味しくご飯が食べられるように、夕食を食べすぎない、ヘルシーなものにする、など摂り方に気をつけるところからはじめてみましょう。おかずには食物繊維の多い緑黄色野菜や根菜を摂り、噛み応えやボリュームをアップしましょう。夕食のボリュームを減らした分、朝食はしっかりと食べることを心がけましょう。

妊娠中の眠気 原因は?

妊娠中なかなか起きられない、という方も少なくはないでしょう。特に妊娠初期は頭がぼーっとして、1日中眠気を感じるという方もいるかもしれません。原因は妊娠によるホルモン分泌量の変化によるものであったり、そのホルモンによるストレスや身体の変化によるものだったりと様々です。
妊娠・出産は、人生においてまぎれもないビッグイベントです。長い妊娠生活をできるだけ良いものにし、元気な赤ちゃんを育て生むためにも、自分を労り、無理せず過ごしていくようにしましょう。

質の良い睡眠をとるために

① 日中に適度な運動をする

1日中うとうとしてしまったり、夜寝つけなかったりと、妊娠中は生活のリズムを整えることが難しいかもしれません。適度な運動を行うことで、生活リズムが整いやすくなっていきます。必ず医師に相談し、許可が出た場合に行うようにしましょう。
例えばお腹が張らない程度のウォーキングや、無理のない体勢のヨガ、軽いストレッチなどもおすすめです。本来起きるべき時間は起きて活動し、夜は早めに眠りたっぷり睡眠をとることで、規則正しい生活リズムに整えていくことができます。

② 入浴の時間やタイミング

入浴は血行を促進し、体温を上昇させる効果があるため、妊娠中も温浴効果によるメリットは多くあります。お風呂に入り温まることで、様々なマイナ―トラブルが緩和されるケースも多くあります。質の良い眠りのためにおすすめの入浴のタイミングは、入眠の1~2時間程度前に入ることです。また、温度は38~40℃程度で10分程度を目安に入りましょう。熱すぎない温度のお風呂にゆったりと入ることで一時的に体温が上がり、お風呂上りに体温が下がるタイミングで眠気を誘発させることができるのです。

③ 寝る前にスマホやパソコンを見ない

眠れないからと、寝る直前までスマホやパソコンを操作していませんか?その習慣が自律神経へ影響し、睡眠の質を悪化させてしまいます。その原因はスマホやパソコンから多く出ているブルーライトにあります。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、リラックス状態のときは副交感神経が、興奮状態にあるときは交感神経が優位になります。夜になるとメラトニンの分泌が増え、副交感神経が優位に働くのですが、寝る前にスマホの明るい画面を見ていると夜なのに交感神経が活性化されてしまい、いわゆる自律神経の乱れが引き起こされてしまうのです。就寝の2時間前を目安にスマホやパソコンなどの操作を終え、本を読んだりリラックスをしたりして、意識的に身体を睡眠モードに導くことが大切です。

体内時計を狂わせないための生活の工夫10箇条

① 朝の光をしっかり浴びましょう。スマホやパソコンなどの光は夜型化を助長するのでやめましょう。
② 朝食をしっかりと摂り、副時計に朝を教えましょう。
③ 休日もできるだけ起床時刻を守り、平日と2時間以上ずれないようにしましょう
④ カフェインを含むお茶やコーヒーは、就寝4時間前までに済ませましょう。
⑤ 適度な運動をしましょう。夜遅い時間の運動は、夜型化を助長するのでやめましょう。
⑥ 昼寝をするなら午後3時までに、長くても30分以内にしましょう。
⑦ 明るすぎる照明は睡眠を妨げるので、影響が弱い赤色系の電球を利用するようにしましょう。
⑧ 夕食はできるだけ就寝2時間前までに済ませましょう。
⑨ 夕食が遅くなる場合は18時前に分食をし、夜遅い時間はエネルギー量の少ない食事にしましょう。
⑩ お風呂は就寝の1~2時間前に、38~40℃の温度で10分程度湯船に入りましょう。

 

今回はここ数年で注目されている時間栄養学の考えから、妊娠中も健やかな生活習慣を送るためのヒントをお伝えしました。妊娠中は身体が思うように動かず、規則正しい生活を送ることが難しい場合もあるかもしれませんが、あまり自分を責めすぎず、休めるときはゆっくりと休みながらリラックスしたマタニティライフを送れると良いですね。

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この記事の監修者:松尾和美

保有資格

・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者

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