コラム

妊娠中にかかりやすい生活習慣病と予防法について

妊娠すると一定の間隔で行われる妊婦検診。検診では必ず尿検査を行い、妊娠中の身体にトラブルのサインが出ていないかをチェックしています。赤ちゃんや自分に問題がないか毎回ドキドキしてしまいますよね。決められた周期でしっかり通院することが大切です。
今回は、妊娠中の女性がかかりやすい病気や早期発見の方法、食事での予防法などについて解説していきます。

妊婦検診で調べている項目は?

妊娠中はお腹の赤ちゃんが健康に育っているかどうかで頭がいっぱいになっていると思います。「妊婦検診」というと、内診やエコーで赤ちゃんの成長をチェックすることがメインのように思われますが、同時に妊娠中の母体の健康をチェックしています。
妊婦検診の度に必ず行われる検査項目の中には体重・血圧・尿タンパク・尿糖・むくみ(浮腫)などがあります。それぞれの項目はどのような意味を持つのでしょうか。

体重

妊娠中は適切に体重が増えていくことが大切です。急激な体重増加はママの身体やお腹の赤ちゃんに負担をかけてしまう可能性もあります。体重増加により、血圧上昇、糖尿病になるリスクも高くなるため、体重の推移を毎回確認します。

血圧

妊娠中に血圧が高くなる「妊娠高血圧症候群」をチェックしています。妊娠20週以降、分娩後12週までの収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。

尿タンパク

腎臓の動きを確認しています。尿にタンパクが出ているということは、腎臓の機能が不十分で身体に必要なタンパク質が体外に排出されているということです。腎臓病や妊娠高血圧症候群の疑いがあります。

尿糖

妊娠糖尿病の疑いをチェックしています。

浮腫(むくみ)

妊娠中はホルモンバランスの影響でむくみやすい状態です。日常に影響がない程度のむくみであれば問題はないですが、中には病気の原因でむくみが生じている場合もあります。

尿検査で「尿糖が+」(尿に糖が出ている)・むくみや「尿タンパクが+」(尿にタンパクが出ている)という結果が出た、という方もいるかもしれません。検査前に食べた食事が影響することもあり問題のないことが多いですが、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症の早期発見の手がかりになることもあります。

妊娠中は非妊娠時に比べ様々な病気にかかりやすく、中でも妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群は妊娠中にかかりやすい病気です。それぞれの疾患と食事での予防法について詳しく見ていきましょう。

妊娠糖尿病

妊娠中に糖尿病を患うことを妊娠糖尿病と呼びます。妊娠中はどんな妊婦さんも血糖値は上がりやすくなります。しかし、糖尿病を患うと上がった血糖値をうまく抑えることができず、身体に悪影響を及ぼしてしまいます。妊娠糖尿病になると、流産や早産・赤ちゃんの心臓肥大・新生児低血糖などのリスクが高まります。
妊娠糖尿病になりやすい体質の特徴として、
・肥満体質(BMI25以上)
・妊娠中の急激な体重増加
・35歳以上
・家族に糖尿病疾患患者がいることなどがあげられます。
これらに当てはまる人が必ずなるわけではありませんが、特に注意して妊娠期間を過ごすことが望ましいでしょう。

妊娠糖尿病予防の食事

①1日に必要なエネルギー量を摂る

食事を抜いたり、どか食いすることなく、毎日適切なエネルギー量を摂取することが、肥満を予防し、糖尿病予防へとつながります。1日に必要な摂取カロリーは自身の身長から算出する「標準体重」から求めることができます。

標準体重=身長(m)×身長(m)×22

標準体重を求めたら、「身体活動量」30kcalを掛け、妊娠中の場合エネルギーの負荷量を足すと適正エネルギー量になります。

標準体重×30kcal+負荷量

負荷量:妊娠初期+50cal
中期  +250kcal
後期  +450kcal

1日の自分の摂取エネルギー量がわかったら、朝・昼・夕・間食に分けてバランスの良い食事を目指しましょう。

②間食・甘い飲み物に要注意

普段から間食を取る習慣がある方は、食事量は多くなくても気づかないうちにカロリーオーバーになっている可能性も。まずは間食や飲み物を見直してみましょう。揚げたドーナツやクリームたっぷりのケーキといった高カロリーな間食の食べ過ぎには気をつけましょう。スポーツドリンクや炭酸飲料にも砂糖は多く入っており、血糖値が上昇します。おやつは無糖ヨーグルトにナッツやはちみつを適量入れたものに変える、飲み物をノンカフェインのお茶に変える、など工夫しましょう。甘いお菓子や飲み物を減らすことでカロリーを抑えることができるだけでなく、血糖値の上昇も抑え、糖尿病予防につながります。

③ごはんやパンなどの主食は抜かず、適切な糖質を

糖尿病予防のためにと、極端に糖質を抜くことはかえって逆効果です。赤ちゃんが成長するためには糖質が必要です。また、食べる糖質の量を極端に減らすとケトン体という物質が出て、これが胎児に影響があると言われています。毎食ごはん茶碗に軽く一杯程度のごはん・6枚切り食パン1枚分など、主食も取るようにしましょう。

④バランスの良い食事を心がける

現代の食生活は忙しいとついつい糖質に偏りがちです。パンやパスタ・おにぎりなどの主食だけでなく、肉や魚などの主菜・野菜や豆類・海藻類を使った副菜もそろえましょう。毎食用意することは難しいかと思いますが、副菜はまとめて作り置きしたり、冷凍ストックを活用すると毎食の献立がスムーズになります。また、毎食何品も用意することは難しい場合も、ごはんと一緒に野菜やお肉などのたんぱく質も摂れるどんぶりやチャーハンなどにすることも良いでしょう。

妊娠高血圧症候群

妊娠すると身体の血液量が通常の1.3~1.5倍に増えます。これに対し通常の場合は血管も拡張し血圧が上がることはないのですが、何らかの原因で血管が広がらず、血液が血管を圧迫し、血圧が上がってしまうことがあります。これが妊娠高血圧のメカニズムです。
妊娠高血圧症候群の原因は明らかになっていませんが、以下の場合は注意が必要と言われています。
・高齢妊婦
・妊娠前から血圧が高めの人
・急激な体重増加
・家族歴

食事での予防法

①減塩

急激な体重増加は血圧上昇につながる可能性があるので、妊娠中の体重管理は必須です。塩分は健康な妊婦さんの場合、過度に制限する必要はありませんが、日本人の多くは塩分を摂り過ぎている傾向にあるので、日ごろから濃い味に慣れている方は、これを機に薄味に慣れていくのも良いでしょう。

(減塩のポイント)
スパイスやしょうが・にんにくなどの香辛料を使い、食事の風味を良くすることで塩分が少なくても満足感を得ることができます。また、お味噌汁や煮物はだしをしっかりと取ることで、味噌の量が少なくてもおいしさを感じやすくなります。市販の顆粒だしには塩分が含まれるので、塩分不使用のだしを選びましょう。

②カリウムの摂取

カリウムは体内に残った過剰なナトリウム(塩分)を尿へ排出する役割があります。カリウムを多く含む食べ物を取り入れましょう。

(カリウムが多く含まれる食品)
野菜:ほうれん草・小松菜・かぼちゃ・アボカドなど
果物:バナナ・もも・メロン・キウイなど
豆類:あずき・枝豆・そら豆など
芋類:里芋・さつまいも・じゃがいもなど
海藻類:ひじき・わかめ・昆布など

(効率的に摂る方法)
カリウムは水に溶けやすく、煮る・ゆでるなどの調理法で失われやすい栄養素です。
汁に溶けだすので、煮汁ごと食べられる汁物やスープに、生で食べられるものは生で食べることがおすすめです。また、かぼちゃや芋類はゆでてもほとんどカリウムの量は変わりません。果物は生で食べられるのでカリウム摂取にはおすすめですが、糖分も多く含まれるので妊娠糖尿病の疑いがある方は注意が必要です。

 

今回は妊婦健診と妊娠中に起こりやすい病気を予防するための食事法についてのお話でした。妊娠中はホルモンバランスの変化や血液量が増えることで、非妊娠時には現れていなかった「身体の弱い部分」が出やすい時期とも言えます。自身の食習慣や生活習慣を見直し、お腹の赤ちゃんにもママ自身にとっても健やかな時間を過ごしていただけたらと思います。

(記事監修:管理栄養士 松尾和美)

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