コラム

冬の不調対策に、身近に取り入れやすい薬膳の考え方

公開日:2022年2月2日

記事監修:管理栄養士 松尾和美

妊娠を望む方には「冷え」は大敵です。冷えることで月経不順を引き起こす原因になったり、子宮の血流が滞る恐れがあります。そのため、より妊娠しやすい体を作るためには、血行を良くし、体質を改善することが重要になります。
冷え改善と食事は切り離せない密接な関係がありますが、そのなかでも今回は、中国で古くから伝わる考え方をもとにした、薬膳をテーマにお話ししていきます。薬膳カフェなども近年では増えているため、知っている方も多いと思いますが、まだまだ難しいイメージや、科学的根拠がなさそうなイメージがあるかもしれません。現在の西洋医学と照らし合わせると、理にかなっている点も多いのが特徴なので、ぜひ参考にしてみてください。

薬膳とは?薬膳を取り入れて体質改善しましょう


薬膳というとどんなイメージがありますか?薬のような感じで難しそう、高価な食材を使いそう、というような、とっつきにくいイメージがあるかもしれません。しかし、実際はそうではないのです。薬膳とは簡単に言うと、「自分の体質に合った食事をし、体調を整える」というものです。
病院に行くほどではないけれどなんとなく不調だなという症状は、皆さん少なからずあるのではないでしょうか。このような症状を薬膳の世界では「未病」と言います。2000年以上も前の中国の書物には、現在でいう予防医学につながる概念がすでに認識されていて、未病のうちに早期発見し病気を予防するという考えが、薬膳の根本にあるのです。

薬膳料理とは、中医学理論(中国数千年という長い歴史に裏付けられた、中医薬学の理論と臨床経験に基づく中国の伝統医学)に基づいて調理された料理のことです。薬膳料理は生薬を使ったものだけではなく、日々私たちが食べている穀物や野菜・肉・乳製品などを使った料理も該当します。
例えば薬膳の何かを食べると冷え性が治る、というような直接的な効果を連想される方もいらっしゃるかもしれませんが、薬膳とはすぐに効果がでるものではありません。そのときの体調や季節の変化に合わせて食材や調理法を選び、自分の体をケアしていくことが薬膳の考え方です。そのため、基本的には西洋医学で処方される薬のように、すぐに効くという考え方はしないのです。

あなたはどちらのタイプ?陰と陽

まずは薬膳診断であなたの体のタイプを知りましょう。

□顔色 A:赤ら顔 B:どちらでもない C:色白い
□夏場の冷房 A:よく効かせたい B:どちらでもない C:控えめがよい
□手足の体感温度 A:熱い・ほてりやすい B:どちらでもない C:冷えやすい
□便通 A:便秘気味 B:どちらでもない C:下痢気味
□感情の起伏 A:怒りっぽい B:どちらでもない C:落ち込みやすい

Aが多い 熱タイプ

陽性の体質を持っているタイプです。内臓に負担をかけやすい傾向にあります。

Bが多い 標準的な体質

陰・陽のどちらに偏ることなく、バランスの良い体質といえます。

Cが多い 冷タイプ

陰性の体質を持っているタイプです。体が冷えており、内臓の活動も鈍りがちです。

中医学の考え方では、食べ物を「体を温めるもの」「体を冷やすもの」そして、「どちらでもないもの」の3種類に分けて考えます。ご自身の体の特徴がわかったら、どんな食べ物を積極的に食べると良いのか確認をしてみてください。

体を温める性質の食べ物(冷タイプの人に)

穀類:もち米
野菜:小松菜・玉ねぎ・にんにく・にら・かぼちゃ
果物:桃・栗
肉類:鶏肉・鶏レバー
魚介類:あじ・ぶり・さわら・さけ・まぐろ・太刀魚・海老
調味料:大豆油・菜種油・黒砂糖・酢・酒・シナモン

体を冷やす性質の食べ物(熱タイプの人に)

穀類:麩・そば
野菜:ごぼう・なす・ほうれん草・セロリ・トマト・たけのこ・春菊
果物:柿・梨・オレンジ・キウイフルーツ
海藻類:ひじき・のり
魚介類:かに・はまぐり・しじみ
調味料:ごま油・白砂糖・食塩

また、五味という考え方もあり「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(塩辛い味)」のことを言います。それぞれに対応する臓器があると言われています。

酸味

下痢や汗・咳を止め、精神の緊張を和らげる作用があります。肝臓の働きを促進し消化を助けます。

苦味

解熱作用があります。心臓の働きを促進し、血液を全身に送り出します。

甘味

食欲増進・解毒作用があります。脾臓(薬膳では腸や胃のことを言います)の働きを促進し、消化吸収、不要物の排出をします。

辛味

発汗作用があります。肺の働きを促進し、呼吸、全身の水分調節の働きがあります。

鹹味

便秘や腫れ物を改善する作用があります。腎臓の働きを促進し、水分の代謝と貯蔵をします。

五味は、それぞれの臓器は味と連動しているという考え方で、例えば酸っぱいものが欲しいと思ったときは、肝臓がその味を求めているということになります。ただし、その味ばかりを摂取していると、逆にその臓器を痛めてしまうということも示しています。何事もほどほどにすることが大切なのです。

冬におすすめの薬膳とは?

薬膳では、季節ごとに弱くなる内臓があると考えられています。春は肝臓、夏は心臓、秋は肺、そして冬は寒さや冷えが苦手な腎臓が弱りがちになるので、気にかけるように昔から伝えられてきました。寒さに弱い腎臓の働きが正常でなくなると、膀胱の働きも落ち、尿の排出が遅れて解毒が滞ります。その結果、むくみの原因になりやすいのです。
薬膳の考えで、腎臓は成長・生殖の働きも含んだ、生命の素となるエネルギーの源と考えられています。つまり、臓器としての腎臓だけでなく、泌尿器・生殖器・内分泌系の機能も含めて「腎」としてとらえます。腎臓が弱ることで、足や腰がだるい、冷える、性欲の衰え、月経周期が一定しない、妊娠しにくいなどの症状が出やすいとされているため、腎臓を整えることが妊活中の冬を乗り切るポイントとなるのです。

また、薬膳では食材の色は5色「緑・赤・黄・白・黒」に分類されます。5つの季節に、季節の色の食材を多く食べることを勧めています。

春(緑)

ほうれん草や小松菜・セロリやにらなど香りの強い野菜

夏(赤)

トマト・唐辛子・牛肉・豚肉・まぐろ・かつおなど

土用(黄)

しょうが・とうもろこし・大豆・栗・かぼちゃ・卵黄など

秋(白)

大根・かぶ・山芋・玉ねぎ・にんにく・いか・ほたて貝など

冬(黒)

しいたけ・黒ごま・のり・もずく・昆布など

黒い食材は働きが鈍くなる腎臓の働きを助け、機能を正常に保つと考えられてきました。冬には上記で挙げた黒い食材以外にも、腎機能の活性化・貧血にも効果が期待できる黒きくらげ、水分の排出を促す効果があると言われている黒豆などもおすすめです。
薬膳の世界では、冷えの原因は体内の水分バランスが崩れることにあると考えられています。黒い食材は寒さで弱った「腎」に働きかけて血行を良くし、冷えの改善を促します。現在の栄養学でも黒い食材は、抗酸化作用や腸活に効く食物繊維が豊富な食材が多く、免疫力を高めるとされています。

 

薬膳は難しいイメージや、普段の家庭料理で取り入れづらいと感じてしまうかもしれませんが、実は難しいものではなく、日ごろの食事に取り入れやすく、少し薬膳の考えを取り入れていくだけで良いのです。ご自身の体の状態を聞き取り、その症状にあった食事を食べて体をいたわることから、薬膳料理は始まっていると言えるでしょう。ぜひ妊娠を考えている方も、なんとなく不調を感じている方も、ご自身の体の声を聞きながら薬膳の考え方を取り入れてみてくださいね。

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この記事の監修者:松尾和美

保有資格

・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者

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