コラム

夏の食事に要注意!食中毒の予防法は?

公開日:2022年7月24日

記事監修:管理栄養士 松尾和美

気温が上昇する夏場は特に細菌性の食中毒に注意が必要な季節です。妊娠中は免疫力が低下しているため、普段よりも細菌やウイルスにはより一層の注意が必要です。今回は食中毒菌の種類や予防法について詳しくみていきましょう。

食中毒の三原則

食中毒予防で大切なのは「つけない」「増やさない」「殺す」の3つです。

① 菌をつけない

調理に入る前は必ず手洗いをしましょう。手のひら・手の甲だけでなく、つめの間、手首など石鹸でしっかりと泡立て、流水で洗い流します。15秒以上を2回洗うことでより効果的に菌を洗い流すことができます。
また、調理の順番も意識しましょう。スポンジや包丁・まな板は、生の肉や魚を扱った後でサラダなどの生で食べるものに使用すると菌が付着してしまいます。野菜の下ごしらえを終えてから肉や魚を取り扱うようにしましょう。まな板を変えるとより安心です。

➁ 増やさない

菌の増殖を防ぐために、調理後の食材は速やかに冷却するようにしましょう。調理済み食材の温度が高く冷蔵庫に入れられない場合は、保冷剤で冷却したりなるべく早く温度が下がるよう工夫をしましょう。ただし、冷蔵庫に入れておいても菌が死滅するわけではないので、長期間の保存は避け早めに食べ切るようにしましょう。

➂ 殺す

多くの細菌は75℃で1分以上の加熱で死滅します。そのため、十分に加熱することで大抵の食中毒は防ぐことができます。食材の中心温度が75℃にならなくてはいけないので、しっかりと加熱しましょう。ただし、後から述べる一部の菌は高温の加熱でも死滅しないので、そのような菌に対しては高温の加熱は効果がありません。そのため、三原則のすべてを常に意識して行うことが大切です。

細菌の種類と予防法

細菌にはそれぞれ種類や特徴があり、免疫力が低下している妊娠期に特に注意が必要な菌もあります。それぞれの特徴や予防法をみていきましょう。

① 妊娠期に特に注意が必要:リステリア菌

妊婦や赤ちゃんに影響を与える可能性がある食中毒菌のひとつに「リステリア菌」があります。あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、妊娠中は特に覚えておきたい食中毒菌です。なぜなら健康な人がリステリア菌に感染してもその多くは症状が出ずに済みますが、妊婦が感染すると重症化する場合があるからです。ある研究データによると、非妊娠時と比べてなんと17倍も感染しやすいと言われています。おもな症状には39℃台の発熱・インフルエンザのような悪寒・だるさ・腹痛・背部痛などがあげられます。妊娠中に感染した際、最も問題になるのは「胎内感染」で、胎盤を通過して赤ちゃんへ感染する場合があるということです。母体がリステリア菌に感染した場合、生まれてきた赤ちゃんのうち68%に新生児リステリア感染症がみとめられたという報告があります。重症化した場合は最悪、流産や死産の原因となってしまうこともあります。

<原因となる食品>
リステリア菌は食品を介して感染する食中毒菌で、塩分に強く、冷蔵庫でも増殖します。そのため、季節は関係なく通年注意が必要な細菌です。加熱を必要としないチーズや生ハムなどの食品・生野菜が主な感染源となります。

<感染を予防するためには>
妊娠中はなるべく感染する可能性のある食品を避けましょう。食べる場合は70℃以上によく加熱してから食べるようにしましょう。
(感染予防のポイント)
① 刺身などの生ものは避ける
② 生ハムやソーセージなどは加熱する
③ ナチュラルチーズなどの加熱せずに製造された乳製品は避ける
④ 生野菜はよく洗ってから食べる

リステリア菌は加熱すれば死滅するため、十分に加熱してから食べることで食中毒を予防することが可能です。

② 妊娠中の半熟卵は要注意:サルモネラ菌

サルモネラ菌は鶏や豚・牛などの動物の腸内に存在します。少量の菌でも感染し、発症することがわかっています。感染すると腹痛や激しい下痢・嘔吐・38〜40℃の発熱などの症状がみられます。この菌は胎児に直接の影響はありませんが、激しい下痢が続くと脱水や子宮収縮を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

<原因となる食品>
卵・鶏肉・鰻などが原因になりやすい食品ですが、圧倒的に多いのは加熱が不十分な卵です。過去の食中毒の例として
① 卵を割り冷蔵庫で保管した後、翌日に作ったスクランブルエッグで感染
② 生卵を入れたボウルを洗わずにポテトサラダを調理し、感染
③ 自家製マヨネーズを長期間使用し感染
などがあげられます。
調理器具が十分に洗浄できていなかったことや、加熱が不十分な卵を長時間保存したことが感染の原因となることがわかります。

<感染を予防するためには>
サルモネラ菌は70℃以上で1分以上加熱すると死滅するため、しっかりと中まで火を通すことで感染を予防できます。また、ポテトサラダなど、マヨネーズを和えるおかずを作り置きする場合は、全体は塩・こしょうで味付けのみ行い、当日食べる分だけ取り分けマヨネーズで和える、など調理にも工夫が必要です。
妊娠中は生卵を控えることはもちろんですが、スクランブルエッグや半熟卵など、中まで十分に加熱されていない状態の卵も感染の恐れがあるため、十分に加熱をするようにしましょう。

③夏場に特に多い食中毒菌:カンピロバクター

細菌性の食中毒の中でも最も発生件数が多いのが、カンピロバクターによる食中毒です。カンピロバクターは鶏や牛などの家畜動物やペットなどの腸管内に生息している細菌で、食肉全般に付着しています。感染すると下痢や嘔吐など、一般的な食中毒の症状がみられ、まれにカンピロバクター感染から数週間後に「ギラン・バレー症候群」という末梢神経疾患を発症することがあります。手足の麻痺や顔面神経麻痺・呼吸困難などが生じる疾患で、免疫が低下している妊娠中は特に注意が必要です。

<感染を予防するには>
75℃で1分以上加熱処理すれば死滅するため、食材の中心までしっかりと火を通してから食べることが大切です。ステーキや鶏のから揚げ・ハンバーグなどの肉類は、中心部まで十分に加熱がされているか注意して食べるようにしましょう。

④100℃の熱でも予防できない!ウェルシュ菌・セレウス菌

一般的に菌は熱に弱いとされていますが、ウェルシュ菌は熱に強く、細菌の胞子のような「芽胞」を作ります。この芽胞は熱に非常に強く、なんと100℃で1時間加熱しても生き残れてしまいます。ウェルシュ菌は40℃前後が一番増殖しやすく、これはカレーや煮物を長時間放置したときの環境です。鍋ごと冷蔵庫へ保管する場合も、温かい鍋の温度が下がり、中の料理が冷えるまでには時間がかかるため、その間にも菌が増殖する恐れがあります。カレーなどの煮物を作った場合は小分けにして冷蔵庫で保管し、菌の増殖を防ぎましょう。

 

今回は食中毒の予防法や、妊娠中特に注意が必要な食中毒菌についてのお話でした。食中毒菌と一口で言っても、それぞれ菌には特徴があり、中には冷蔵庫の冷たい環境でも増殖する菌や、100℃以上の熱でも耐えられる菌もあります。夏場は特に食中毒に注意が必要ではありますが、妊娠中は夏が終わっても引き続き注意しましょう。
家庭での食中毒は調理の手順や食材の保存法を工夫することで発生を予防することができます。ぜひ正しい知識を身につけて衛生的で美味しい食事を楽しみましょう。

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この記事の監修者:松尾和美

保有資格

・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者

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