鉄不足は産後うつになりやすい?鉄不足を予防する食べ物と摂り方
公開日:2022年3月26日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
産後は出産の疲労を抱えたまま慣れない赤ちゃんの育児が始まり、夜中の授乳やおむつ替え、お母さんは睡眠時間が不足しやすくなります。疲労やホルモンバランスの影響から思考もネガティブになりやすくなっています。近年は新型コロナウイルスの影響で産後は特に外出する機会が減っていることもあり、人と気軽に会ったりリフレッシュすることが難しく、産後うつがたびたびニュースになります。
産後うつは、実は食事を意識することでそのリスクを抑えることができ、食事の中でも特に『鉄』と関係が深いと言われています。鉄不足が産後うつ(気力低下・疲れやすさ)に関与する理由とは?またどのような食事に気をつけると良いでしょうか?
<目次>
1. 妊娠中〜産後に鉄不足になりやすい理由とは?
2. 具体的な鉄の必要量とは?
3. 鉄不足と産後うつの関係とは?
4. 鉄不足解消におすすめの食事
5. 鉄の吸収を阻害する食べ物に注意
6. 時短でも栄養素をきちんと摂る工夫を!
妊娠中〜産後に鉄不足になりやすい理由とは?
妊婦検診で定期的に血液検査が実施されますが、中でも貧血の項目は特に重視されています。貧血と診断され、鉄剤を処方して貰ったという妊婦さんも多いのではないでしょうか。妊娠すると赤ちゃんを育てるためにお母さんの体の中で作られる血液量が増えますが、その分血液の濃さは血液量に反比例して薄くなり、それが原因で貧血になりやすいと言われています。産後も、母乳はお母さんの血液から作られるため、母乳育児をするならば必要以上に鉄を意識した食事をしないと妊娠中と同様かそれ以上に貧血になりやすいのです。
このように妊娠中から産後は特に貧血になりやすい時期だと言えます。疲れやすい、気力の低下、眠れない、すぐに息切れする、顔色が悪い、爪がスプーン状に曲がる、無性に氷が食べたい等の症状が出ている場合は貧血のおそれがあります。
具体的な鉄の必要量とは?
鉄の必要量は日本人の食事摂取基準2020より、1日の推奨量は18~29歳・30~49歳(月経有)でともに10.5mgとなっています。さらに妊娠初期はこの推奨量に+2.5mg(13mg)、妊娠中期~後期は+9.5mg(20mg)、授乳中は+2.5mg(13mg)と定義されており、非妊娠時に比べると鉄が多く必要です。
鉄不足と産後うつの関係とは?
鉄は酸素を体内に運んだり、脳への神経伝達物質の合成に関わっているため、不足すると酸素が全身に行き渡りづらく疲れやすかったり、神経伝達物質がうまく合成されずにさまざまな精神症状が現れると言われています。産後うつと診断された女性には貧血の方多く、産後に鉄剤を投与したことで不安感や不眠が改善されたという報告もあります。
鉄不足解消におすすめの食事
①まずはたんぱく質源を毎食食べる
鉄不足解消としてはまずは血液の原料であるたんぱく質源をしっかりと食べることが重要です。たんぱく質には肉や魚、豆腐などの大豆製品、卵などがあります。これらを毎食、意識して食べてください。手のひらと同じサイズが目安量です。
②鉄が多く含まれる食材を食べる
鉄が含まれている食材をしっかりと食べてください。ここで注意したいのが鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類あり、ヘム鉄の方が非ヘム鉄より吸収率が高いので、同じ量を食べるならばヘム鉄が多く含まれる食材の方が貧血対策にはおすすめです。
・ヘム鉄が含まれる食材:牛肉(赤身)、魚の血合い、レバーなど
・非ヘム鉄が多く含まれる食材:小松菜・枝豆・ほうれん草・春菊など
③鉄の吸収率がupする食材を一緒に
非ヘム鉄も鉄自体の吸収を良くする栄養素ビタミンCと併せて摂ると吸収率が上がります。これらと一緒にビタミンCが含まれる食材(赤ピーマン、黄ピーマン、ブロッコリー、じゃがいも、キウイ、イチゴなど)を食べることで鉄の吸収率を高めてくれます。
鉄の吸収を阻害する食べ物に注意
逆に、鉄の吸収を阻害する食べ物には注意が必要です。
1つ目はコーヒー、緑茶、紅茶などに含まれるタンニンです。産後は授乳があるためカフェインの摂りすぎには注意が必要ですが、貧血予防のためにも極力避けましょう。食事時は水か麦茶などノンカフェインの飲み物を選ぶようにしていただき、どうしても飲みたい時は食後1~2時間ほど空けてから飲むと良いでしょう。
2つ目は穀類などの外皮、玄米などに含まれるフィチン酸です。玄米を健康・美容のために摂る女性は多いですが、貧血が気になる時は避けましょう。
3つ目はおから、大豆、穀物の外皮、海藻類などに含まれる食物繊維です。これらを食べる際はタンニン同様に、鉄の豊富な食材と食べる時間をややずらしてみてください。
時短でも栄養素をきちんと摂る工夫を!
産後は赤ちゃんのお世話がメインになり、自分のことに手が回らなくなってしまいがちです。そこで、ハンバーグやミートボールなどの冷凍食品を活用する、ツナやサバなどの缶詰を活用する、冷凍のカット野菜を活用してビタミンCを摂取するなど、時短ながらも必要な栄養が摂れるようにするのがおすすめです。散歩のついでにテイクアウトを利用するのも良いですね。産後は時間がないのにお母さんは栄養が特に必要なので、『必要な栄養素をいかにして時短で摂るか』が大切です。
今回は鉄不足と産後うつの関係、そして鉄不足を解消する食事についてのお話でした。家事も育児も完璧に、と考えると産後のお母さんは特に行き詰まってしまいますので、冷凍食品や缶詰をフル活用しながら時短でいかに栄養素を摂るかを意識して育児を楽しみましょう。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者