コラム

どうして起こりやすい?妊娠期のお口トラブルの原因と予防法

公開日:2022年4月18日

記事監修:管理栄養士 松尾和美

妊娠中は様々なマイナートラブルに悩むことが多いですが、見落としがちな口腔内のトラブルもそのうちの1つ。ブラッシング中に出血があったり、歯ぐきが赤く腫れていたりしませんか?実は放っておくと早産につながる可能性もある怖い状態なのです。今回はトラブルが起きやすい原因と予防法についてのお話です。

<目次>
1. あなたのお口は大丈夫?毎日の歯磨きでできるセルフチェック法
2. 妊娠中のお口トラブル その理由は?
3. 生まれてくる赤ちゃんのためにも予防は大切
4. 検診でお口の中のチェックを
5. 悪化すると早産のリスクも!?
6. 虫歯予防のために控えたい食べ物・飲み物
7. 歯の健康を保つために積極的に摂りたい食べ物
8. 歯周病におすすめの食事法とは?

あなたのお口は大丈夫?毎日の歯磨きでできるセルフチェック法

歯ぐきや歯と歯の間の歯肉が赤く腫れるなどの症状がみられることを歯肉炎といいます。歯肉炎はまだしっかりとケアすることで症状を抑えられる段階で、早めの治療やケアが大切なのです。

歯肉炎チェックをしてみましょう。

□歯肉の色が赤っぽい
□歯ぐきがぷにぷにと腫れている
□歯磨きの時に出血する

この3つの項目のうち1つでも当てはまる場合は歯肉炎になっている可能性が高いです。

歯肉炎は悪化すると歯周炎という病気に進行します。歯周炎になると歯ぐきの炎症が進み、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)が深くなり、歯ぐきが下がってきてしまいます。さらには歯槽骨という歯ぐきの中に埋まっている歯の根を支える大切な骨が溶けて、最終的には歯がぐらぐらとして抜けてしまうこともあるのです。歯周病という言葉が一般的に使われると思いますが、これは歯周炎と歯肉炎の総称で、お口の中で炎症が起き、何らかのトラブルがあることを指します。

妊娠中のお口トラブル その理由は?

妊娠中は特にお口のトラブルが起きやすくなります。ほとんどの妊婦さんが妊娠中に歯肉炎(歯ぐきの軽い炎症)を起こしていると言われるほどです。その理由は何なのでしょうか。

① ホルモンバランスの影響

妊娠中は「エストロゲン」「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンの分泌が盛んになり、このホルモンを好む細菌が増えることにより歯周炎になりやすくなります。そのため、ホルモンの分泌量が増える妊娠5週~20週ごろから歯肉が腫れたり出血したりすることがあります。
また、この2つの女性ホルモンは妊娠中だけでなく、排卵と生理のサイクルにも影響しているため、そもそも女性は歯肉炎になりやすいと言われています。もともと歯肉炎だった女性が妊娠をきっかけに、さらに悪化させてしまうケースもあります。

② つわりでブラッシングができない

妊娠初期につわりがひどいと歯磨きが十分にできないことや、食事が不規則になり普段通りのケアができないことも原因の1つです。歯磨きが十分にできないことで歯こう(プラーク)が増え、歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすくなります。さらに妊娠に伴う免疫機能の低下も影響して、歯ぐきに炎症が起きやすくなります。

③ 虫歯が多くなる

妊娠中は胃が圧迫され一度にたくさんの量を食べることが難しい方が多く、こまめに食事を摂ることもあるでしょう。つわりでこまめに食べないと気持ちが悪い、という方もいるかもしれません。食べ物が口の中にある時間が増えるため、細菌が増えやすく虫歯の原因となりやすいのです。

生まれてくる赤ちゃんのためにも予防は大切

妊娠すると必ずしも虫歯や歯周病になるというわけではなく、日ごろの歯磨きをしっかりと行うことで予防が可能です。また妊娠中一時的に歯周炎になっていたとしても、正しい口腔ケアを続けていることで、産後ホルモンのバランスが落ち着くと自然と治っていくこともあります。しっかりと予防ケアをすることはママ自身にとってはもちろんですが、生まれてくる赤ちゃんにとっても重要です。虫歯菌は母子感染することが知られており、赤ちゃんが虫歯になる原因の多くは一番よく接するママからの感染が多いのです。そのため、妊娠中から正しいケアをすることが重要なのです。

検診でお口の中のチェックを

つわりがひどく歯磨きが十分にできない場合は無理せずうがいのみにとどめ、症状が落ち着いてきたら歯磨きを再開しましょう。また、お腹が大きくなってくるとなかなか歯科に行くことも難しく、長時間仰向けになっていることでお腹が張ったり、胃が圧迫されて苦しくなったりする場合もあるでしょう。そのため、安定期に入り体調が良く、まだお腹が大きくなりすぎていない妊娠7ヶ月ごろまでの時期に、可能であれば一度歯科医にお口の状態を見てもらうと良いでしょう。
妊娠中ホルモンの影響で一時的に悪化する歯肉炎は、歯ぐきが腫れたり出血しやすくなるだけで歯槽骨が溶けるまで悪化することはありませんが、長いこと放置することで悪化してしまうことがあります。定期的に検診を受けて早めの治療を受けることが大切です。

悪化すると早産のリスクも!?

予防ケアすることは赤ちゃんのためになるということを前述しましたが、実はお腹にいるうちも関係があるのです。歯周病が悪化すると「サイトカイン」や「プロスタグランジン」などの炎症を起こす物質が多く産出され、歯ぐきの毛細血管から血流にのって体内を移動し、子宮に到達してしまうことがあります。その結果子宮収縮が起こり、早産につながる可能性があると言われています。妊娠中、ママが歯周病になると胎児の成長にも影響を及ぼし、2500g未満の低体重児になりやすいとも言われています。あるデータによると歯肉炎や歯周炎を起こしている妊婦では、お口トラブルのない妊婦に比べて早産のリスクが約2倍、早産かつ低出生体重児のリスクが約3倍高くなるという報告もあります。

虫歯予防のために控えたい食べ物・飲み物

虫歯になる原因は、酸によって歯が溶かされるためです。虫歯菌が糖を分解して作る酸が、虫歯の原因となるのです。水分補給のためにジュースやスポーツドリンクを日常的に飲む機会が多い方は、歯が糖に触れている時間が長く、虫歯になりやすいと言えます。飲み物のほか、飴やクッキーなどの間食が多いことも虫歯の原因となります。特にチョコレートやキャラメルなど、歯につきやすい食べ物は要注意です。

歯の健康を保つために積極的に摂りたい食べ物

歯の健康を保つためには、

① 歯の原料となるカルシウム

乳製品・大豆・ひじき・ごまなど

② 歯の表面を覆うエナメル質を強化するビタミンA

かぼちゃ・人参・ほうれん草など

③ 歯の主体となる象芽質(エナメル質に覆われている歯の主体となる組織)を作るビタミンC

いちご・パプリカ・みかん・ピーマン・じゃがいもなど

④ 歯を強くするフッ素

わかめ・のりなど

これらの食材を摂ることが歯の健康につながっていくと言えるため、意識して積極的に摂っていけると良いですね。また、よく噛んで食べられるもの(スルメイカや干しいも・果物など)や糖分が少ないもの(チーズ類や小魚・ナッツ類など)をおやつに食べるようにすることも、虫歯の予防につながります。

歯周病におすすめの食事法とは?

歯周病は炎症を起こしている状態なので、炎症を抑える働きがあるオメガ3系の脂肪酸を摂ることがおすすめです。オリーブ油・えごま油・青魚に多く含まれます。さらに虫歯予防同様によく噛むことで予防ができるので、根菜類やナッツ類など、よく噛める食材を積極的に取り入れましょう。
ビタミンC・E・B2は、健康な歯ぐきを保つのに役立ちます。ビタミン類は血流を促し、粘膜の修復にも役立ちます。
ビタミンC:いちご・パプリカ・みかん・ピーマン・じゃがいもなど
ビタミンE:アーモンド・かぼちゃ・アボカドなど
ビタミンB2:魚(ぶりやさわらなど)・卵・ほうれん草など

 

妊娠中はなかなか歯医者さんへ行くことも難しいかもしれません。ですが、なるべく時間を作って定期的に検査を受けること、そして毎日の歯磨きで正しいケアをすることで初期の症状を抑えることができます。自身のためにも、生まれてくる赤ちゃんのためにも、お口と歯の健康を守りたいですね。

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この記事の監修者:松尾和美

保有資格

・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者

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