離乳食が始まる前に 知っておきたい食物アレルギーのお話
公開日:2022年4月13日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
私たち人間の体には、細菌やウイルスなどの病原体の侵入から体を守る、免疫という働きがあります。ところがこの免疫が有害な病原体ではなく、本来無害なはずの食べ物や花粉などを異物と判断し、自身の皮膚・粘膜・消化器・呼吸器などに症状を起こすことがあります。これをアレルギー反応と呼びます。今回は離乳食が始まる前に知っておきたい、食物アレルギーについてお伝えしていきます。
子どもに発症しやすい食物アレルギー 食物アレルギーの原因とは
通常、食べ物を異物として認識しないようにする仕組みが働き、栄養として吸収することができます。しかし、免疫反応を調整する仕組みに問題がある場合や、消化・吸収が未熟だと、食べ物を異物と認識してしまうことがあります。それによって起こるアレルギー反応が、食物アレルギーです。おもに食物に含まれるたんぱく質がアレルゲンとなって発症します。食物アレルギーの有病率は0歳児が最も高く、年齢が高くなるにつれ減少します。これは、乳幼児期は消化機能や腸管のバリアが未熟で、未消化な食物たんぱく質が侵入しやすいためで、多くの場合は成長によって克服していきます。
食物アレルギーかも?と思った場合は、まず食べたときの症状をしっかりと把握することが一番大切です。異変に気づいたときは、食べたものの種類・量・発症までの時間・症状を記録します。病院を受診した際、その記録を医師に伝えることで、アレルゲンの特定がしやすくなります。その後、血液検査をして、その食品にアレルギーがあるかどうかを調べます。
0歳~3歳までに多い三大アレルギー それぞれのアレルゲンの特徴と離乳食の進め方
アレルゲンになる食べ物の種類は年齢によって違いがあります。0~3歳までの上位を占めるアレルゲンは、卵・乳・小麦です。その後、年齢が高くなるにしたがって、甲殻類・果物類・ピーナッツ・そば・大豆など、様々な食品がアレルギーの原因物質となります。三大アレルギーの特徴と離乳食の進め方をみていきましょう。
①卵
卵はしっかり加熱することによって、アレルギーを起こす可能性が大きく低下します。ゆで卵に反応する場合でも、クッキーやパンなど加熱が十分にされている食べ物は食べられることがあります。逆に、固ゆでのゆで卵を1個食べることができても、半熟の卵焼きや親子丼でアレルギー反応が出てしまうことはしばしばあります。
【離乳食の進め方】
卵は生後5~6ヶ月ごろの離乳食を開始してから、1ヶ月たったころから与え始めます。少し早いのでは?と感じる方もいるかもしれませんが、これは最近の研究で、早い時期からアレルゲンとなる物質を食べさせていくことがアレルギーの発症を抑えられ、逆にアレルゲンの摂取を遅らせることはアレルギーの予防にならない、ということが明らかになっているためです。
卵アレルギーは卵白に含まれる成分が原因となるため、離乳食ではまず卵黄から与えていきます。卵黄にもわずかに卵白の成分が混ざっている場合があるので、固くゆでた卵の中心部分から、少量ずつ(耳かき一杯程度から)開始します。離乳食が進むとともに、様子をみながら少しずつ量を増やしていきます。
②牛乳
乳製品に含まれるたんぱく質の中の80%を占める、カゼインが代表的なアレルゲンとなります。カゼインは加熱によりアレルゲン性は低下しないため、卵と違い牛乳を加熱してもアレルゲンはほとんど弱まりません。
【離乳食の進め方】
生後7~8ヶ月ごろから、アレルギーが発症しにくいとされるヨーグルトや粉チーズ・脂質が少ないカッテージチーズを少量ずつから与えていきます。その後、加熱した牛乳を少量ずつ与えていきます。冷たい牛乳は内臓に負担をかけ、お腹を壊す原因となるため、1歳を過ぎてから与えましょう。
③小麦
小麦アレルギーの原因となるのは、小麦たんぱくに含まれるグルテンによるものです。小麦は高温で加熱しても、アレルギーの性質を低下することはできません。小麦製品によってグルテンの含まれる量が異なるので、注意が必要です。例えば小麦粉でも、クッキーやケーキに使われる薄力粉に比べ、パンに使用される強力粉のほうがグルテンの含有量は多くなります。
【離乳食の進め方】
離乳食開始から1~2ヶ月たったころから、ゆでたうどんを細かく刻み(またはすり潰し)、少量ずつ与えていきます。この時、パンではなくうどんから開始する理由は、たんぱく質量がうどんのほうが少ないことと、パンは卵や乳など他のアレルギー反応を起こしやすい物質が含まれているのに対し、うどんはアレルゲンとなるのが小麦グルテンのみのため、アレルギー反応が起こったときにどの物質で反応しているのかわかりやすいためです。
離乳食の最新の対策
①離乳食を遅らせず、適切な時期に開始する
ひと昔前は、アレルギーを起こしやすいものはなるべく食べさせないほうが良いと考えられていましたが、最近の研究では早期に食べ物を与えることで食物アレルギーを発症しにくいという報告があがってきています。食物アレルギーの症状が出ていない赤ちゃんの場合は通常通り開始し、食べられるものの幅を少しずつ広げていきましょう。ただし、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎などの肌トラブルがある場合は、食物アレルギーの症状が出る可能性もあるため、医師に相談しながらごく少量から始めるなど、慎重に開始することが必要です。
②食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係
食物アレルギーはアトピー性皮膚炎と合併するケースがよくあります。アトピー性皮膚炎がある場合、皮膚に炎症が起きている状態となり、皮膚にある免疫細胞が反応し、アレルギーを起こしやすくなります。アトピー性皮膚炎や乳児湿疹がある場合は、スキンケアが最も効果的です。早めに医師に相談し、薬で治療していきましょう。
簡単でアレルギーも安心!離乳食・幼児食レシピ
卵・乳・小麦を使用しない、アレルギー対応のレシピをご紹介します。
米粉の蒸しパン(離乳食後期~)
【材料】(4個分)
米粉 80g
砂糖 20g
ベーキングパウダー 2g
重曹 1g
豆乳 70cc
香りのない油 大さじ2
(作り方)
① ボウルに米粉・砂糖・ベーキングパウダー・重曹を入れて、ゴムベラでよく混ぜる。
② ①に豆乳を加えてゴムベラでよく混ぜる。
③ ②に油を入れ、均一になるまでよく混ぜる。
④ カップに③を8分目まで入れ、蒸気の上がった蒸し器で強火で15分蒸して出来上がり。
お豆腐ナゲット(離乳食後期~)
【材料】(10個分)
人参 1/3本
ピーマン 1個
ひじき(乾燥) 3g
鶏むねひき肉 30g
木綿豆腐 300g
片栗粉 大さじ3
しょうゆ 小さじ1
揚げ油 適量
(作り方)
① 木綿豆腐はあらかじめ水切りをしておく。
② ひじきは水でもどし、水気をしっかりと切っておく。
③ 人参は長さ3cm程度の千切りにする。
ピーマンは粗みじんにする。
④ ボウルに①・②・③と鶏むねひき肉・片栗粉・しょうゆを入れてよく混ぜ合わせ、10等分にする。
⑤ 揚げ油を熱し、④を両面こんがりとするまで加熱する。
器に盛りつけて完成。
食物アレルギーがある場合、特定の食べ物を除去することで栄養不足になりやすくなります。例えば、牛乳・乳製品にはカルシウム・たんぱく質などバランス良く含まれており、除去することでカルシウム不足が懸念されます。しらす干しやサクラエビ・ひじきなど、他の食品でカルシウムを補給する工夫をしましょう。
乳児のアレルギーは近年増加しており、いまや乳児の10人に1人が患者と言われています。自分の子供に食物アレルギーがあると思った場合も自己判断はせず、医師の判断のもと離乳食や幼児食を進めていくことが大切です。また、食物アレルギーの予防にスキンケアが効果的ということもわかっています。季節ごとに赤ちゃんの肌の状態は変化していくので、正しいスキンケアをして予防していきましょう。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者