コラム

「隠れ貧血」が妊娠を遠ざけている可能性も!?妊活中から意識したい貧血予防

公開日:2022年6月15日

記事監修:管理栄養士 松尾和美

妊活中に大切な栄養素というと、葉酸と答える方が多いかもしれません。妊娠初期から特に必要量が増えるため、妊娠を考えている女性は意識的に摂取することが推奨されています。実は鉄分も同じくらい必要なのをご存知ですか?鉄分は妊活中から妊娠中ももちろん、産後まで重要ですが、必要性についてはあまり知られていません。今回は妊活中から意識したい鉄分のお話です。

貧血と不妊の関係

女性は毎月の月経で鉄分が失われるので、実は妊娠可能な年齢の女性の多くが鉄不足の状態と言えます。ある調査によると50歳未満の女性のうち5人に1人は貧血であるが、そのまま放置されていると言います。体内の鉄の6~7割は血液に含まれるヘモグロビンの成分として、残りの2~3割は脾臓・肝臓・小腸粘膜などに貯蔵鉄(フェリチン)として蓄えられています。体内の鉄が不足すると、まずは貯蔵鉄から不足分が補われて血液中に供給されます。しかし、一般的な血液検査では赤血球中のヘモグロビンやヘマトクリットの数値を調べるので、貯蔵鉄が不足していても気づかないことがほとんどなのです。失われた分の鉄分が補充されない状態が続くと、フェリチン値が低くなり、いわゆる「隠れ貧血」になります。フェリチンの値は5ng/ml以上が正常と言われていますが、妊娠を望む場合、10ng/ml以下の値は深刻な状況と言えます。血液検査を最近した方は数値をチェックしてみてください。

貧血と不妊の関係ですが、妊活には精子や卵子の「質」が関係しています。さびた状態、いわゆる酸化は精子・卵子ともに良くないのですが、鉄分は酸化の元となる活性酸素を除去する働きがあります。また、鉄分は子宮粘膜を作る材料となるため、子宮内の環境を整えることにも不可欠です。不足すると受精卵が着床しづらくなったり、流産率が上がるという報告もあります。
さらに、妊娠すると胎児に栄養や酸素を与えるために、妊娠前に比べ血液量が増えるため、赤血球の材料である鉄分は多く必要になります。妊娠後の検査で貧血と分かった場合、鉄剤が処方されるのですが、ヘモグロビンの値が正常化するのには2~4ヵ月・フェリチンの値が正常化するのには大体6ヵ月かかります。また鉄剤で補おうとしても、つわりで飲めないという方も多いのです。このことから、妊活中から貧血予防は意識的に行うことが重要なのです。

鉄の1日の摂取推奨量は?不足するとどうなるの?

月経のある10~40代の女性の鉄分の必要量は10.5mgです。鉄分は肉類・魚介類・藻類・野菜類・豆類に多く含まれています。鉄には非ヘム鉄とヘム鉄があります。全体的に鉄分は吸収率が低いミネラルですが、鉄分の中でも吸収の良いヘム鉄はレバーや魚介類に多く含まれます。一方、非ヘム鉄はのりなどの海藻類に多く含まれます。

朝忙しく食べる時間がない、昼食・夕食もダイエットのため食事量を控えている、甘いもの・糖質が好きで食事が偏りがち、こんな方は貧血になっている可能性が高いです。ぜひご自身の食習慣を振り返ってみてくださいね。鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血になり、下記のような症状がでます。
・からだが重い
・息が切れる
・顔色が悪い
・疲れやすい
と感じるようになったら貧血かもしれません。

一工夫で身近な食材で鉄分を補給するポイント

鉄分はもともと吸収率が悪く、不足しやすい栄養素と言われています。牛肉の赤身・魚介類・レバーなどに多く含まれますが、それらが日常でなかなか摂りづらいというのも原因です。ここでは鉄分を効率良く吸収するための選び方、食べ方などをお伝えします。

①忙しい朝食もバランスを意識

毎日の朝食は何を食べていますか?忙しいからパンだけ・ご飯だけ・食欲がないから飲み物だけで済ませている、という方もいらっしゃるかもしれません。鉄分は一度に吸収できる量が限られており、1回の食事でたくさん取り入れても全てが吸収されるわけではありません。そのため、3食でこまめに鉄分が含まれる食べ物を取り入れることが大切なのです。

朝食の献立例
貧血予防におすすめ ご飯・パンなどの主食に合わせるおかず
・卵焼き 1個【鉄分0.8mg】
・黒ごま豆乳ドリンク(200ml)【鉄分3.3mg】
(作り方:豆乳200mlに黒ねりごま大さじ1・はちみつ大さじ1をミキサーで混ぜる)
・アボカドサラダ【鉄分0.6mg】
(アボカド100g・レタス・ミニトマト・パプリカ・ブロッコリーなど好みの野菜)
・果物(いちご・キウイフルーツ・オレンジなど)

いつものパンやご飯にあと1品プラスすると、鉄分補給ができるメニューになります。卵は定番で使いやすい食材かと思いますが、卵1つに0.8mgの鉄分が含まれます。吸収率のよいヘム鉄を含む食品であることから、忙しい朝におすすめの食品と言えます。さらに卵焼きの中にひじきやほうれん草を入れると、さらに鉄分補給ができます。
豆乳・黒ごまにも鉄分が多く含まれます。黒ごまのほかにもココアにも鉄分は多く含まれるので、手作りドリンクを作る際にはその日の気分で味を変えるのも良いですね。
アボカドは野菜の中でも比較的鉄分が多い食品です。植物性の食品に多い非ヘム鉄であるため、吸収の良いビタミンCと一緒に摂ると効果的です。特にパプリカ・ブロッコリー・果物などに多く含まれます。果物にはビタミンCが豊富に含まれるものが多いため、鉄の吸収を良くするためにも意識的に摂りたいものです。

②麺類を選ぶならおすすめは蕎麦

昼食は簡単に麺類で済ませることが多いのではないでしょうか。麺類の中でもそばは1人前で1.4mgと、主食の中でも鉄分を多く含む食品です。吸収率の低い非ヘム鉄であるため、ビタミンCを多く含む食品をプラスするとよいでしょう。

昼食の献立例
・おろし納豆そば 【鉄分1.4mg】(そば170g・納豆80g)
・ほうれん草のお浸し 【鉄分0.7mg】(ほうれん草100g)
・トマト・枝豆サラダ 【鉄分1.2mg】(枝豆50g)

③お肉だけじゃない!鉄分を多く含む食品

鉄分補給、というとレバーや赤身のお肉、というイメージが強いかもしれませんが、実は魚にも多く含まれます。

さんま 1尾(150g)【鉄分2.1mg】
あじ 1~2尾(100g)【鉄分0.7mg】
ししゃも2~3尾(80g)【鉄分1.3mg】
まぐろ刺身6切れ(60g)【鉄分1.1mg】
まぐろ缶詰(ツナ缶)1缶(70g)【鉄分0.4mg】

夕食の献立例
・さんまの塩焼き【鉄分2.1mg】さんま1尾(150g)
・高野豆腐の煮物【鉄分4.5mg】乾燥高野豆腐小4個(60g)
・あさりの味噌汁【鉄分1.1mg】殻つきあさり(30g)
・ひじきサラダ【鉄分0.6mg】乾燥ひじき(2g)

和食にすると比較的多くの鉄分が摂れるのでおすすめです。
そのほかにも、下記も鉄分を吸収しやすくするのでぜひ取り入れてみてください。

1.よく噛むこと
2.酸味を活用:梅干しやかんきつ類・酢の物などを食事に取り入れる
3.香辛料を活用:こしょう・カレー粉・生姜などを料理に取り入れる

レモンやカレー粉・梅などをプラスすることで毎日の食事のアクセントになり、献立の幅も広がりますね。

 

ヒレ肉・ステーキ・レバーなど、鉄分が多く含まれる食品以外にも、さまざまな食品に鉄分は含まれます。毎食の食事の中で少しずつ摂ることが大切なので、意識していきたいものですね。
妊活とも深い関係がある貧血。無症状だけど実は隠れ貧血という場合もあります。ご自身の食生活を振り返ってみて、少しバランスが偏っているな、と感じたら、ぜひ今回ご紹介した食品を取り入れてみる、食べ方を意識するなどしてみてくださいね。

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この記事の監修者:松尾和美

保有資格

・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者

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