妊娠中に意識したい!カルシウムを上手に摂取する方法
公開日:2022年8月3日
記事監修:管理栄養士 松尾和美
カルシウムと言うと、成長期の子どもや、高齢者の方が骨粗しょう症にならないために摂る栄養素、というイメージが強いかもしれません。しかしカルシウムは、おなかの中で赤ちゃんを育てている妊娠中のママにも大切で、しっかりと意識して摂ってほしい栄養素です。今回は、妊娠期の女性に必要なカルシウムの量や、カルシウムが含まれる食材、カルシウムの吸収を高める食べ合わせについてご紹介します。
カルシウムの働きとは?
カルシウムは全体の99%が骨や歯に貯蔵されていますが、わずか1%は血液中に存在しています。血液中のカルシウムは、心臓の筋肉の収縮や神経の伝達、血液の凝固(怪我をした時に血を固める)などの役割をします。血液中のカルシウムの濃度は、8.5〜10.4mg/dlに保たれています。しかし、この血液中のカルシウムの濃度が低下すると、主に骨からカルシウムを溶かして元の濃度に戻そうとします。骨からのカルシウムの溶け出す量が増えるほど、骨がスカスカになり、将来的に骨粗しょう症の原因となると言われています。また骨だけではなく、歯ももろくなります。こういった理由から、血液中のカルシウムが不足しないように、また骨や歯に貯蔵されているストック分としてのカルシウムを使わなくても良いように、毎日の食事からカルシウムをしっかりと摂る必要があるのです。
妊娠期に摂るべきカルシウム摂取量は?
日本人の食事摂取基準(2020年版)より、18〜49歳の女性に推奨されているカルシウムの摂取量は、1日650mgです。この数値は妊娠期でも非妊娠期でも変わらない基準です。厚生労働省が定期的に無作為で実施している国民健康・栄養調査(最新データは令和元年)によりますと、カルシウムの1日の平均摂取量は20~29歳では408mg、30~39歳では406mg、40~49歳では441mgとなっていました。18〜49歳の女性に推奨されているカルシウムの摂取量は1日650mgなので、比較すると209〜244mgも不足していることがわかります。そもそも日本人は全体的にカルシウム不足なのです。
厚生労働省の報告書によりますと、カルシウム摂取量が不足している女性(500mg/日未満)については、母体とおなかの赤ちゃんにおける骨の需要に対応するために、付加が必要である可能性も報告されています。極端にカルシウムが摂れていない女性が妊娠した場合は、特にカルシウムを意識して摂る必要があると言えます。
1日に必要なカルシウムをしっかりと摂るために
カルシウムが含まれる食材リスト
1日に必要な650mgのカルシウムを摂るために、なにをどれだけ食べたら良いでしょうか?
①牛乳 600ml
学校給食でも毎日出る牛乳。手軽で取り入れやすい食材の1つです。牛乳は200ml当たり、カルシウムが220mg含まれます。
牛乳を600ml摂れば、1日に必要なカルシウムが摂れます。ただし乳糖不耐症の人は、一度にまとめて飲むとおなかを壊してしまう可能性もあるので、分けて飲んだり、乳糖が分解されている牛乳を選ぶと良いですね。
②チーズ 110g
チーズ25g当たり、カルシウムが158mg含まれます。チーズを110g食べると、1日に必要なカルシウムが摂れます。チーズはそのまま食べても良いですが、匂いが気になる方、味が気になる方は、ピザやパスタなどに使うとマイルドになるためおすすめです。粉チーズのようにちょい足ししても良いですね。
③ヨーグルト 540g
ヨーグルト(プレーン)100g当たり、カルシウムが120mg含まれます。ヨーグルトを540g食べると、1日に必要なカルシウムが摂れます。ただしヨーグルトそのものですとたくさん食べるのは大変ですので、メイン料理やサラダなどに使うことをおすすめします。例えば、トマトピューレとヨーグルトを混ぜてコンソメで味をつけ、そこへ夏野菜と鶏肉を入れて煮込めば、バランスの良い酸味のあるメイン料理になります。また、かぼちゃなど甘めの野菜と一緒に混ぜて、サラダにしても美味しいですよね。
④木綿豆腐 2パックと100g(800g)
豆腐100g当たり、カルシウムが86mg含まれます。豆腐1パック300gとすると、2パックと+100gで1日に必要なカルシウムが摂れます。豆腐は味噌汁の具としてもメジャーです。夏ですと冷奴がつるりと食べやすいですね。冬の定番ですが、鍋料理に入れると比較的たくさん食べることができます。
⑤しらす干し 300gと少し
しらす100g当たり、カルシウムが210mg含まれます。しらすは骨まで丸ごと食べられる魚で有名ですよね。塩抜きをして赤ちゃんの離乳食で使われるほど、栄養満点の食材です。ただし1日で300gのしらすを食べることは難しいと思いますので、毎日少しずついろいろなメニューに取り入れていただくと良いでしょう。例えば、ほうれん草や小松菜などの青菜と一緒に炒める、きゅうりと和えて酢の物にする、チャーハンの具材にする、また、刻んだ紫蘇の葉と一緒に混ぜご飯やおにぎりにしても、食べやすくなりおすすめです。
カルシウムの吸収をアップさせる食材
上記ではカルシウムそのものが含まれる食材をピックアップしましたが、せっかくカルシウムを摂るならば、カルシウムの吸収をアップさせる栄養素を一緒に摂っていただくと良いでしょう。カルシウムの吸収をアップする栄養素として、ビタミンDが有名です。
①菌類(きのこ)
菌類は植物性食材の中でも、特にビタミンDが豊富です。しいたけ、えのき、舞茸、エリンギなどの菌類は、ビタミンDが含まれている上に食物繊維も豊富です。妊娠中のトラブルの1つである便秘対策にもおすすめですので、カルシウムの吸収アップやおなかの調子が気になる方には、ぜひ摂っていただきたい食材です。菌類は食材そのものの味が強くないため、味噌汁の具材にする、炒め物にする、など和風でも洋風でもアレンジしやすいのが魅力です。
②魚介類(かつお・いわし・さんまなど)
かつおやいわし、さんまなどの魚介類にもビタミンDは豊富です。また、良質なたんぱく質も魚介類には含まれるため、妊娠中にはぜひ摂りたい食材の1つです。
妊娠中に摂りたい栄養素として意外と見落としがちなカルシウム。現状として全体的に日本人は、カルシウム摂取量が必要量に対して低いことが挙げられるため、特に妊娠中の方はしっかりと意識して摂っていただきたいです。しかし、つわりなどで食事から摂りづらい場合は無理をしないで、手軽に摂れるカルシウムのサプリメントを活用していただくと安心ですね。
この記事の監修者:松尾和美
保有資格
・管理栄養士
・野菜ソムリエ
・美肌食アドバイザー
・栄養療法ダイエットアドバイザー
・ベジフルビューティーアドバイザー
・ファスティングマイスター
・薬事法管理者
・コスメ薬事法管理者